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2010年3月 1日 (月)

金メダルはゴールかステップか

久々に、思いっきり落ち込みました。
風邪引きで金曜は休み、土曜は会合&実務補習仲間の懇親会に行き、
ふたたびぶり返して日曜は家で大人しくしていましたが、

3日間、仕事をしていないだけでなく、
診断士にかかわるメール対応すら一切サボっているていたらく。
ぼーんやりとネットを眺めていました。

大好きな、女子フィギュアのフリープログラムを見てからです。

自分でも、なんでそこまで落ちるのか解らずにいましたが、
明日の朝からは会社もあるし、読まなきゃいけない本、
返信したり御礼しなきゃいけないメールも流石に溜め過ぎ。

気持ちを整理するためにも、ブログに書いてみようと思いました。


最初に断って置きますが、自分は、
「わぁきれい」レベルでしかフィギュアを見ていないド素人です。

アルベールビルの伊藤みどりとクリスティ・ヤマグチ選手の対決、
その中での伊藤みどりのトリプルアクセルの興奮を
子供心にうっすらと覚えている程度。

それからも、リレハンメルの女子フィギュアでの
オクサナ・バイウルに惚れてしまった程度。
リレハンメルの時にはアホみたいにビデオを繰り返して、
うっすらジャンプの見分けがつくようになりましたが、
今ではそれもよく解りません。
現在の採点システムもちゃんと解っていません。

だからこそ、これまで度々、採点システムについての
意見を目にしても、自分の意見をとりたてて表明していません。


ただ、元々、オクサナ・バイウルが好きだったこともあり、
彼女のような、バレエっぽい感じのフィギュアが好きでした。

そんな自分にとっても、
4年前にいきなりグランプリファイナルで優勝した浅田真央は衝撃的で、
しかも、まだ何の悩みも無さそうに、
くるくると可憐に演技する彼女の明るさに魅了されました。

さらに、少し遅れて、キムヨナの「ムーランルージュ」や
「あげひばり」にこれまた衝撃を受けて、

この2人の天才少女が19歳で迎えるバンクーバー五輪は、
どんなに楽しいものになるのだろうとワクワクしていました。

トリプルアクセルをはじめとする高難度のジャンプ、
柔軟性豊かなスパイラルやスピン、
そして、格の違いを感じさせるような難しそうなステップをこなしていく浅田真央と、
スピード感があり、少女離れしたメリハリと色気のある演技をするキムヨナ。
私には、どちらも素晴らしく魅力的に見えました。
(ちなみに、マスコミでよく指摘されてきた、
 “浅田真央は表現力が低い”というのは、私にはよく解りません。)

近年では、キムヨナの点数がメキメキと上がって、
その得点が論議を呼んでいましたが、
さほど気にすることはありませんでした。


でも、オリンピックのフリーをキムヨナがノーミスで滑り終えて、
150点という得点が表示された時には、ショックで茫然としました。

なんなのでしょうこの点は。

この巨大な得点を背に、演技を始める浅田真央を思うと、
観ているだけのくせに、心臓がバクバクし始めました。


細かい採点がわからないくせに文句を言う権利は、
私には無いのだと思います。
それでも、150点はあまりにショックでした。

なぜなら、採点システムはよくわからないながらも、
妥当な数値の移行ライン、みたいなのはあると思うのです。

これは、フィギュアスケートの情報ブログで見た、
2007年3月現在での女子フィギュアの歴代得点。

前から、総合・SP・FPです。

1 浅田真央  199.52 69.50 130.02(06年NHK杯)
2 スルツカヤ 198.06 67.58 130.48(05年ロシア杯)
3 コーエン   197.60 71.12 126.48(03年スケートカナダ)
4 安藤美姫  195.09 67.98 127.11(07年世界選手権)
5 荒川静香  191.34 66.01 125.32(06年トリノ五輪)

更に、2007年11月のロシア杯で、
キムヨナが197.20・63.50・133.70という得点を出しています。
その後、キムヨナの得点は、
2009年世界選手権では、207.71・76.12・131.59
2009年エリック・ボンパール杯で、210.03・76.08・133.95 となっています。

キムヨナが凄い勢いで最高得点を更新しているのがわかります。
でも、私はキムヨナの演技が好きだし、難しいことはわからないので、
あんまり気にしないで見ていました。

上記、2007年3月の上位5人を見ると、
2003年~2007年3月の間に、5人の選手がそれぞれに違う魅力を発揮して、
フリーの点数が125点~130点まで上がって行っています。
競い合う中で、徐々に点数は上昇するのでしょうけれど、
それでも、4年間で5点です。

浅田・スルツカヤ・コーエン・安藤・荒川…
いずれも違う魅力があって、甲乙付けがたい選手だと
私は思っていました。
(フリーだけなら、06世界選手権でのキミー・マイズナーも129.70)

多くの方が指摘しているように、
キムヨナがバンクーバーで金メダルを取ったことに何の異論もありません。

ただただ、私には、150という数字が悲しかった。

その数字の前には、
これまでの全ての名選手の名演技が霞んでしまった気がして。


キムヨナはもちろん素晴らしいと思います。

でも、キムヨナだけが、
他の選手に20点という点差を付けるほど素晴らしくて、
逆に言えば、他の選手が彼女より20点劣るとは思えません。

例えば、荒川のスケールの大きさと、コーエンの軽やかな優雅さ、
私にとってはどちらも素晴らしくて、そこにキムヨナを加えても、やっぱり、

「みんな違って、みんな良い」

ってしか思えない。

どの大会でも、その時代時代に頂を競う選手がいて、
4年に一度の緊張の中でベストを尽くし、
僅差を闘うアスリートの世界だから
その姿に圧倒され、感動するのだと思っていました。
(トリノのプルシェンコはちょっと宇宙レベルでしたけど)

そんな自分にとって、
150点というのは侵しがたい絶対的な壁のようなものに見えました。


そんな中で演技を始める浅田真央は、
絶対叶わない何かに突撃していくドンキホーテみたいに思えました。

そして、その中でも、
「フリーでトリプルアクセルを2回、ショートとあわせて一大会で3回跳ぶ」
という、点数とは別次元での消えることない結果を出したことに、
涙が出るほど感動しました。

浅田真央の気持ちがわかるわけはないけれど、
彼女が試合後のインタビューで泣いていたのは、
金メダルやスコアのことではなくて、
後半でミスをしてしまい、彼女自身が納得が行く、
ベストの作品を完成することが出来なかったことに対してだと、
私は思いました。

ここ数年、採点評価は驚くほど変化していたと思います。
その中で、多くの選手がその変化に悩まされ、
得意だったはずのルッツジャンプや、
跳べたはずの3-3ジャンプを回避せざるを得ないような
苦しみを味わって来たのだと思います。

昨日まで認定されていた自分のジャンプが
ある時から不正になったり回転不足になったりして、
目にも見えないような修正を迫られる苦しみは、
スポーツができない自分には想像も付かないものだと思います。


そんな中でも、浅田真央は常に新たなチャレンジをしていたと思います。
チャルダッシュはテンポが難し過ぎると思ったし、
仮面舞踏会はあまりに運動量が多過ぎると思ったし、
「なんでそんな難しいことをやるのだろう?」
「もっとラクに上手く見せればいいのじゃないか?」
私は、シーズンの始まりごとにそんな感想を抱き、
そして、シーズン終わりには悉くそれを乗り越えてしまう
浅田真央のアスリート魂につくづく度肝を抜かれていました。


今回のオリンピックで、「戦略」という言葉を
これまで以上に多く耳にしたように思います。


150点という得点の裏に、大人の事情が絡むのかどうかは
私には知る由もありません。
ただハッキリしているのは、浅田真央よりも、
キムヨナの方が戦略に勝っていたということです。

多くの報道で、戦略を疎かにした
タラソワコーチのプログラムが批判されているのを見ました。

私も、シーズン始めには同様のことを感じました。

「鐘」はあまりにも重苦し過ぎる。
例えば、前シーズンで、安藤美姫がイマイチ合わない「ジゼル」を
素早くやめて「オルガン付き」で得点を伸ばしたように、
鈴木明子が、彼女のリズム感を最大限活かしたプログラムで、
観客を魅了しているように、
浅田真央も、もっとノリが良い曲を使えば良いのにと思っていました。


でも、昨年末の全日本選手権を観た時に、
時代に翻弄される民衆の怒りのような、
何か大きなものを込めたこのプログラムに心を打たれました。

そして、ミスはあったけれども、オリンピックの大きな舞台で
重たい音楽に合わせて迫力溢れるステップを踏んで行く
浅田真央の姿に、全日本以上の感動を覚えました。
スパイラルシークエンスの場面で、
あんな地鳴りのような歓声が起こったのも、
彼女の迫力ゆえのことだと思います。

2月26日、フリープログラムは終わり、キムヨナは20点以上の大差で圧勝し、
「浅田真央は残念だったね。でも銀が取れて良かったね。
 キムヨナはノーミスだったし、浅田はミスしたからしょうがないね。」
みたいな軽い報道をたくさん見ました。

時代遅れの感が否めないタラソワのプログラム、
そんな記述も目にしました。


確かに、かわいい真央ちゃんには
もっと似合うプログラムがあったのかもしれません。

ショートでは「仮面舞踏会」じゃなくて、
もう少し点が取れそうな曲でも良かったかもなぁ、
というのは、正直なところ、私も思います。

けれど、きっと、様々な思い入れがあって、
ロシア人のタラソワが浅田真央に託したのであろう
「鐘」というプログラムが、
「戦略性が無い・時代遅れ」という言葉だけで
終わってしまうことには、言いようのない悔しさを覚えます。


フィギュアとは美しいものであり、
観客を喜ばせれば盛り上がり得点が伸びやすいのかもしれません。
けれど、それが解っていながらも、そのような場に
「鐘」という壮大な曲で挑んだ浅田真央とタラソワの
チャレンジを、私は尊敬しています。

そして、母国のマスコミから十分な評価を受けられなくても、
SP,FPあわせて3回のトリプルアクセルという
前人未到の挑戦をし、実現したことにも敬意を表したいです。

こうして、一連のモヤモヤを改めて言葉に落として見る時、
色んな問題は、
「金メダルをゴールと考えるか、ステップと考えるか」
ということに集約するのかもしれないと思いました。


マスコミでの大きな流れを見ると、
きっと、金メダルはゴールだったのだと思います。
そしてそれは、キムヨナにとっても。


そして、浅田真央にとっては、
金メダルがゴールでは無かったのだと思います。

浅田真央は、バンクーバーで金メダルが欲しいと明言していましたが、
トリプルアクセルや「鐘」が、金メダルのために最適な道ではないことくらい、
本人はともかく、周りの大人たちは解っていたことだと思います。

金メダル獲得というゴールから見たら、
浅田真央が選んだ手段は愚かだったのかもしれません。

けれど、私個人としては、
誰もが金メダルに向けて戦略を練りに練って、
ただただ採点システムに迎合するようになってしまったら、
そして、採点システムの気まぐれに合わせて、
難しいチャレンジを簡単に捨てたり回避したりするようになったら、
そこに、これまでと同じ喜びを見出すことはできないと思います。


補足すると、採点を巡るモヤモヤを除けば、
今回の女子フィギュアはとても楽しかったです。

ゲデバニシビリとコストナーはなんだか残念だったけど、
その2人以外の10位以内の選手は驚くほどミスが少なく、それぞれに
持っている最高のパフォーマンスを発揮していたように思いました。

とても書き切れないので取り上げませんでしたが、
安藤美姫、鈴木明子の演技もとても良かったと思います。
鈴木明子が伸び伸びと魅力を発揮してくれるだろうことは、
オリンピック前から期待していましたが、
それ以上に、精神的に少し不安定だと思っていた安藤美姫が、
認定されることが少ない3-3ジャンプに果敢に挑んだ姿にも感動しました。


今回のことに、こんなにも拘ってしまった理由は、
きっと、フィギュアのみならず、
「戦略性」と「志」のバランスについて
私が日頃から悩むことが多いからだと思います。

例えば、仕事でお取引先のご支援をする際にも、
どこまで戦略に徹して、どこまで相手の心を汲み取るのかなど、
悩むことは多いです。

自分自身の演出についても然り。
診断士試験について考察しても然りです。


これについては、まだまだ答えが出ない問題なのだと思います。

けれど、今回のオリンピック女子フィギュアを見て、
私の心に最も響いたのは、浅田真央の挑戦でした。

「マオ(浅田)にも感謝したい。
果敢にトリプルアクセルに挑んだ姿を見て、
私は悲しいことなんか忘れて正直、燃えたわ。ありがとう」

ロシェットがこんな風にインタビューで言っていたそうですが、
私もやはり、彼女の果敢に挑む姿に勇気づけられたのであり、
同じように感動した人がたくさんいるのだと思います。


志を強く持つことで、
結果的に戦略をも満たす所まで行けるように、
強くなりたいなと思います。

明日からまた頑張ろう。

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コメント

Good job!

投稿: hiro | 2010年3月 1日 (月) 03時44分

>hiroさん

ありがとうございます☆

投稿: ウシ | 2010年3月 1日 (月) 22時52分

女子フィギアの見方は全く同感です。ヨナのボンドガールにはほれぼれしましたが、点稼ぎに徹したフリーにはがっかりしました。あと4年間、真央ちゃんの挑戦と成長を見守れる日本人は幸せです。

投稿: クンミー | 2010年3月 1日 (月) 23時22分

>クンミーさん

コメントありがとうございます。キムヨナのFP,軽やかな動きがガーシュインのピアノと良く合っていたし、4年前からキムヨナを素敵だと思って見ていた中で、あんなにミスをせず伸び伸びと滑っているFPを見たのは初めてだったので、素晴らしいなとは思いました。
それと同時に、「やっぱり同じ構成の演技にはもう飽きたかも…」とも初めて思いました。
私は多分、挑戦する人が好きなのだと思います。

投稿: ウシ | 2010年3月 2日 (火) 22時26分

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